なぜ、北海道の食はこれほど人を魅了するのか。
ヴィラ ルピシア総料理長の植松秀典が、
究極の一皿を求めて、食材のルーツを辿ります。
魅力あふれる北海道食材の産地を求めて
海の幸、山の幸、大地の幸に恵まれた北海道。「ヴィラ ルピシア レストラン」のメニューやレストラン仕立ての商品は、北海道の豊かな食材を丁寧に生かし、つくられています。そんな食材の産地を植松秀典シェフが訪問し、その魅力をうかがいます。今回は盛夏の味、とうもろこしを栽培する留寿都村の「よしかわファーム」に向かいました。
レストランから車で30分ほどの距離にある「よしかわファーム」。飛び地も含め、18haもの広大な農地を、吉川浩さんと、野菜ソムリエでもある妻の巴さんが、主にふたりで管理しています。農家に生まれた吉川さんは、幼い頃から黙々と畑仕事に励む祖父の姿に憧れていたそうです。いつか自分も農業を――。その夢を胸に、JA職員を経て、2016年に新規就農しました。
とうもろこし畑に足を踏み入れると、青々とした茎葉が大人の背丈ほどに伸びていました。吉川さんが主に栽培するのは「恵味ゴールド」。皮が柔らかく甘みが強い品種で、糖度が20度以上に達することもあるそうです。
種をまいてから収穫までは85~90日が目安。収穫期が一度に重ならないよう、時期を少しずつずらして種をまきます。ただし、日数だけで収穫を決める訳ではありません。一本一本の姿を見て、手で触れ、皮の厚みや実の張りを確かめながら、味も見た目も最良となるタイミングを見極めます。収穫後は時間とともに食味が落ちていくため、おいしく届けるためには、この判断が何より大切なのです。
吉川さんが何より大切にしているのが、土づくりです。とうもろこしのほか、ブロッコリーやごぼう、アスパラなど8品目を輪作。作付けの2年前に土壌診断を行い、緑肥をまいて土にすき込んだり、堆肥を加えたりしながら、翌年やその翌年に植える作物に合わせて地力を整えます。いわば、2年がかりで畑の設計図を描くようなものです。
畑の脇を歩くと、ふかふかとした土の感触が足裏から伝わってきます。畑はもちろん、その周囲もきれいに草が刈られ、害虫を畑に寄せ付けないための環境整備にも日頃から目を配っています。「天気のせいにはしたくないので、しっかり土をつくり、できる限りの準備をしています」と吉川さん。よしかわファームの段ボールには、「美味しい野菜で笑顔になれる食卓を。」というメッセージが記されています。その言葉にも、食べる人を思う吉川さん夫妻の姿勢が表れています。
この日、よしかわファームを初めて訪れた植松シェフは、畑や作業場の隅々にまで行き届いた仕事ぶりに感銘を受けました。「よく考えられた丁寧な仕事から、とうもろこしのクオリティーの高さが伝わってきます。僕らの仕事は食材がなければ成り立ちません。だからこそ、良い食材と出会うことが大切なんです」と話します。
ルピシアでは、よしかわファームに7000~7500本のとうもろこしを契約栽培してもらうほか、ニセコ周辺の契約農家からも採れたてを届けてもらっています。恵味ゴールドなど、旬の恵味シリーズのとうもろこしは、レストランのメニューをはじめ、通信販売の「コーンスープ」や、初秋限定「丸ごと とうもろこしコロッケ」に使用。なかでも、とうもろこしの甘みを存分に味わえるコロッケは、毎年完売となる人気のお惣菜です。旬のおいしさを、ぜひお楽しみください。